MCハウス

海軍の街、横須賀と共に育った『スカジャン』

『スカジャン』という呼び名の由来はいくつかあり、お土産としての“スーベニアジャケット”の省略、または横須賀で生まれたジャンバーという意味など諸説あります。『スカジャン』は、神奈川県横須賀の基地で働いているアメリカ軍兵士が、母国へと帰る際の記念として購入して帰った、いわばお土産として誕生しました。起源は、アメリカ軍兵士の方が“駐留した証を形にしたい”という思いを神奈川県横須賀の”どぶ板通り”のテイラーに頼んで服に刺繍をしてもらったことがきっかけでした。実際に刺繍を施した職人は刺繍産業が盛んな群馬県桐生市出身の方がほとんどで、一級品の刺繍が施されました。刺繍が施された『スカジャン』は兵士の中で人気となり、戦後間もない当時の闇市では駐留兵士がこぞって買う人気商品になりました。その後も神奈川県横須賀の“どぶ板通り”を中心に『スカジャン』は人気商品として発展し、現在もファッションアイテムとして多くの方に愛されています。

『スカジャン』のデザイン

エムシーハウスに並んでいる既製品の『スカジャン』だけを見ても、人気のキャラクターや日本を代表する浮世絵や屏風絵などの刺繍が施されたものが存在します。又、自分だけのオリジナルスカジャンが作りたい場合は、オーダーメイドで刺繡を入れることもできます。『スカジャン』が誕生した当時から現在まで使い続けられている人気の刺繍デザインは大きく分けると、以下の 3 つ です。

・オリエンタル柄

虎や龍のデザインはスカジャンのモチーフの中でも特に有名で、一度は見たことがある方も多いのではないでしょうか。『スカジャン』に施される刺繍の顔などは俗にいう“美形”ではなく、少し不格好だけど愛嬌のある姿が特徴です。このデザインは外国人がイメージする虎や龍をモチーフにしています。昔ながらのレトロ感と、オリエンタル感が印象的な刺繍で、今も定番のデザインです。

・和柄

アメリカ軍兵士のお土産として買われていたこともあり、日本らしさが感じられる和柄も人気のデザインです。鯉や桜など、これぞ日本と呼べるデザインが豊富です。“唐獅子と牡丹“や”竹に虎“などの昔から襖絵などで描かれる柄も良く使われます。

・日本地図、横須賀柄

まさに駐留した証を残す目的が強い柄です。当時は、日本地図と言っても“横須賀”や“呉”、“佐世保”のような軍港がある街の名前が刺繍に入っていました。ただ、YOKOSUKAなど、多くの地名は海軍以外の人にとってはなかなか馴染みがない地名でした。軍人さん以外の人がお土産として家に持って帰っても喜ばれるように“Japan”を入れるようにもなりました。今では和柄も含めて『スカジャン』には“Japan”が刺繍で入っています。さらに“横須賀柄”として三浦半島を描き地名を入れたデザインも横須賀みやげとして作られています。

“どぶ板通り”の意志を受け継いで

エムシーハウスの創業者は元テイラーであった経歴もある方で、約30年以上前に、日本で１号店となるディズニーウェア専門店として、現在の地に店を構えました。その後、創業から10年が経った、約25年前からは“横須賀をもっと好きになってもらいたい！”、“スカジャンに次ぐ何か形に残る物を作って、この街に恩返しを！”という想いから、横須賀に因んだモチーフを使い、スカジャンならではの刺繍技術を活かした新しい横須賀みやげ商品として、オリジナルブランド『スカティ』を立ち上げました。『スカティ』は、『スカジャン』の刺繍をTシャツに入れた、横須賀ならではのTシャツブランドですね。その後、2015年には、スカジャン専門店である“ジュピター” が取り扱っていたスカジャンメーカーの 販売権と共に、看板を継承し、本格的にスカジャンも取扱い始めました。“ジュピター”は元々、『スカジャン』発祥の地とされる“どぶ板通り”の老舗でしたが、エムシーハウスとつながりはありませんでした。しかしながら、【スカティ】と言うブランドを立ち上げ、横須賀に根ざした物作り、店作りをする姿勢に共感された“ジュピター”の店主が直接お店を訪ね、『スカジャン』とどぶ板通りに“ジュピター”と言う店があった事を語り継いで欲しいと頼まれたそうです。『スカジャン』を取り扱いはじめたのは約7年前からと最近ですが、すでに約65年もの『スカジャン』の歴史と想いを引き継いでいます。そして、ジュピターからエムシーハウスにスカジャンを販売する権利を移す際に、スカジャンメーカーの社長も又、発祥の地・横須賀でこそ、スカジャンがこれから先も、広く愛され続ける特産品であって欲しいとエムシーハウスの全面バックアップを約束されたそうです。既製品であっても、スカジャン発祥の地・横須賀で販売するに恥じないクォリティーの既製『スカジャン』と、オリジナルブランド『スカティ』、お客様と職人の対話による完全オーダーメイド刺繍の『スカジャン』の3 枚看板でアナログながらも丁寧なものづくりを大切にして営まれています。

『スカジャン』へのこだわりと想い

アメリカ軍兵士がお土産としてのオーダーした事からはじまった、ジャケット×刺繍スタイル。エムシーハウスさんではジャケットやTシャツ、帽子、トレーナー、パーカーなどに『スカジャン』で使用される製法の刺繍を施し、より日常使いしやすい商品を『スカティ』として展開しています。『スカジャン』は工場で作られた既製品がほとんどですが、職人と対話をしながら刺繍デザインをフルオーダーし、オリジナルの『スカジャン』を作ることも可能です。さらにオリジナルの『スカジャン』は『スカティ』同様に、店内にて横振りと呼ばれる工業用ミシンで職人の手で縫い上げられます！エムシーハウスは職人の手で縫い上げられます！エムシーハウスは手縫いの技術もしっかり受け継ぐ貴重なお店です。『スカジャン』の刺繍の魅力の一つは立体感です。立体感を生むために標準的な物でも刺繍になんと約50万針前後 も刺しているそうです！この立体感は普通の刺繍ではなかなか表現できません。『スカジャン』の刺繍は“横振りミシン”と呼ばれるミシンを使用します。家庭でも使うミシンは手で布を抑えてまっすぐ縫う縫い方ですが、“横振りミシン”は足元のペダルを踏み、腿で縫い針の横振り幅を調節しながら縫います。この横振りの強弱で独特の陰影をつけて立体感を生み出しています。手と腿と足先を駆使して縫い上げる刺繍は至難の業。長年の経験がものを言う伝統技術です。一人一人の職人の技で作られる刺繍は個性もよく現れます。色遣いは特に差が出て、同じ絵柄でも少ない色数で仕上げる人、細かく色を使い分けて縫い上げる人と千差万別だそうです。エムシーハウスの刺繍職人、五十嵐さんは黒い犬の刺繍で3色以上の色を使い分けて縫うそうですよ！針の振り幅で表現する陰影と繊細な色遣いで縫い上げられる『スカジャン』の刺繍は1点物の芸術品です。海外の方は特に、『スカジャン』の刺繍、そして職人の技術を「芸術」「伝統工芸」としてリスペクトしてくれている印象が強いようです。エムシーハウスは、刺繍を横須賀の文化として発信・継承していくとともに、新しい商品の開発も止めない『スカジャン』専門店です。

『スカジャン』を横須賀の刺繍文化をつなげたい！

神奈川県横須賀にお店を構える『スカジャン』・『スカティ』専門店のエムシーハウスさん。お店を切り盛りする専務取締役の笹井さんは、『スカジャン』を単なるファッションアイテムの一つとしてではなく、横須賀ならではの伝統工芸品として広めたいと語ってくれました。日本人の『スカジャン』に対するイメージはテレビや映画での影響もあってか、やんちゃな人が着ているイメージですよね。一方で海外の人が『スカジャン』を見ると、刺繍の技術に感動し、“芸術”や“伝統工芸”としてリスペクトした気持ちで商品を見てくれるそうです。いかに多くの人の、これまでの『スカジャン』イメージを払拭して伝統工芸品として商品を見てもらえるかとエムシーハウスさんは常に考え続けています。その中で生まれたのが『スカティ』です。繊細な刺繍をTシャツやパーカーや帽子などに施してよりカジュアルに楽しめるようにという思いが詰まっています。今では『スカジャン』も様々なデザインがそろっています。キャラクターのデザインもあれば、花火のデザインもあります。打ち上げ花火の色合いを鮮やかに表現した『スカジャン』は感動すること間違いなし！まるで絵画を見るようにお店の商品を眺めてみてはいかが？もちろん、オリジナルデザインの注文も可能です。職人がミシンで縫った刺繍は一生の思い出になりますね。そんな『スカジャン』は刺繍職人の後継者不足が深刻です。多くの専門店で賑わった“どぶ板通り”も後継者不足で閉店するお店が増えています。その中でエムシーハウスさんは“横須賀で生まれた刺繍文化を守りたい”、“既製品であったとしても、横須賀で生まれたスカジャンと言うこの街の代名詞でもある 財産を流行に左右されること無く広め残していきたい”との一心で、活動されています。横須賀市民はもちろんのこと、より多くの人に刺繍の文化・価値を伝えるべく、『スカジャン』という形にとらわれることなく発信をしています。エムシーハウスの『スカジャン』にはそんな、本物の刺繍と『スカジャン』・横須賀への想いが詰まっています。軍港めぐりや猿島など、神奈川県横須賀を訪れた際はお店で実際の『スカジャン』を見てみてはいかがでしょうか。

【メーカー情報】
有限会社エムシーハウス
〒238-0041
神奈川県横須賀市本町2-1-12　コースカベイサイドストアーズ２F
TEL：046-821-2217
アクセス：京浜急行　汐入駅より徒歩3分